ファッションアイテムから生活雑貨まで、多彩なジャンルを取り扱う、人気のショップ『B:MING LIFE STORE by BEAMS』。シンプルでカジュアル。しかし、確かな個性が感じられる店内には、日々、新しい発見を求める多くのファンが訪れている。そんな魅力的なショップのスタイルが完成するまでにはどのような道のりがあったのだろうか。『B:MING LIFE STORE』生活雑貨バイヤーの鈴木修司さんにお話をうかがった。
「“happy life solution company” BEAMSの提案するブランドとしてスタートした『B:MING LIFE STORE』。お客様の暮らしを取り巻くモノやコトを同じ目線で捉え、幅広い世代に向けてファッションだけでなくライフスタイルを提案していくスタンスでスタートしました」とのこと。
『B:MING LIFE STORE』のオープンは、ファションメディアなどを中心に“ライフスタイル”への関心が高まりはじめた2012年。BEAMSが展開しているさまざまなレーベルの中でも、『B:MING LIFE STORE』の登場は画期的なものだったという。
「BEAMSとしても、ここまでライフスタイルに特化したショップはなかったですね」と、話す鈴木さん。「ライフスタイルをひと言で言えば“衣食住”。BEAMSの強みでもある“衣”以外の“食と住”でも、お客様のニーズに応えていきたいと思ったのが、大きなきっかけでした」。
木のぬくもりが感じられる、ナチュラルな色合いを基調としたB:MING LIFE STOREの店内。
生活雑貨も豊富に取り揃えている。
そんな『B:MING LIFE STORE』で人気を集めているアイテムがある。それが、Kalitaのロゴを冠するコーヒーサーバー『Wave Style』を『B:MING LIFE STORE』だけの仕様にアレンジしたものだ。ファッションブランドとコーヒー器具メーカー…一見、遠いイメージのある両者の出会いには、あるコーヒー豆のつくり手が関わっていた。
「京都にある『小川珈琲』のコーヒー豆を、『B:MING LIFE STORE』で販売することになって。ただ、豆だけを販売しても淹れる器具がないと意味がない。そのとき、真っ先に思い出したのがKalitaでした」と、語る鈴木さん。
しかし、なぜ “Kalita”の名前が出てきたのだろうか。その答えは、鈴木さん自身のライフスタイルにあった。「実は、普段から自宅でKalitaのドリッパーを愛用していて。シンプルな機能もデザインも、魅力的だと思っていました」。馴染みのあるブランドだからこそ、レコメンドしたくなったのだという。
今回のきっかけとなった小川珈琲とのコラボアイテム。
B:MING LIFE STOREの生活雑貨バイヤーである鈴木さんは、このアイテムの仕掛け人でもある。
そして2014年の春、2人は顔合わせすることになった。「ファッション関係の方とお目にかかる機会が今までなくて。今回のコラボも当社初の試みでした」と、Kalitaの新美は当時の様子を振り返った。ファッションとコーヒー器具…業界を超えて出会った2人が共鳴するまでのプロセスに迫ってみたい。
「プライベートでもBEAMS関連のショップにお世話になっています」と、話すKalitaの新美。
2人の距離を縮めたのは、新美の“あるひと言”だった。「これからはコーヒー器具単体だけでなく、そのプロダクトから生まれるストーリーをお届けしていくんです」。鈴木さんは、この言葉に大きく頷いたという。
「近年、上質なライフスタイルを求める方が多い。服も、家具も、食生活も。その中で“コーヒー”の役割って、実は“いい時間”を演出する重要なピースだと思うんですよ」と、鈴木さん。コーヒーが果たす役割について同じ感覚を持つ2人は、すぐさま無二のパートナーとなった。
鈴木さんはさらに続けた。「コーヒーカルチャーが注目されている今だからこそ、お店だけじゃなく、ご自宅でも美味しいコーヒーを味わってもらいたかったんです。KalitaのWave Styleに目をつけて、コラボモデルを企画した理由もそこにありますね」。
B:MING LIFE STOREは、ファッションアイテムだけでなく、テーブルウェアなどの生活雑貨も多彩にラインナップ。
KalitaのWave Styleの魅力は、コーヒー初心者でも、プロが淹れるような本格ドリップコーヒーが味わえること。「コラボのベースとなるプロダクトの選定にも、ショップのコンセプトが関係しています」と、鈴木さんは話す。「『B:MING LIFE STORE』は“ハッピーを育てよう”というコンセプトの下、“誰もが手軽に楽しめるアイテム”という基準で、私たちバイヤーも商品開発を行っています。このドリップサーバーは、まさに“ちょうどいい”一品でした」。
従来のWave Styleとの違いを、新美に尋ねてみた。「持ち手の部分ですね。既存製品はプラスチック製でしたが、『B:MING LIFE STORE』らしい“ファッション性”をこの部分で表現できないかと打診しました」。そう依頼された鈴木さんは、「はじめにストーリーを考えた」と答えてくれた。
「イメージしたのは、“ギャザリング”」と、鈴木さん。ギャザリングとは、欧米で流行しているパーティースタイル。ガラスのワイングラスや陶器の器など、普段使っている食器類を屋外に持ち込み、自宅で開いているかのように、カジュアルにパーティーを楽しむ文化である。「リビングだけではなく、テラスやアウトドアのシーンでも、美味しいコーヒーを味わえる習慣をつくりたかったんです」。
そのアイデアを落とし込むべく、素材選びからこだわった。「カバーの生地は、『BEAMS』で取扱中の人気キャンバスバッグブランド『アーツ&クラフツ』を手がけている『エバーグリーンワークス』にお願いしました」。そして選ばれた、肉厚のキャンバス生地。カラーリングはカーキ、コーヒーブラウン、オフホワイトの全3色。シーンに左右されない自然な色合いを追求した結果、この3色に辿り着いた。
Wave Styleのコラボモデル。コーヒーのある食卓を連想させる店頭レイアウトである。
さらにこだわりのポイントがあると、鈴木さんは教えてくれた。「このボタン、プラスチック製なんです。アウトドア製品にもよく使われていますよね。軽くて丈夫で、劣化しにくい。コーヒーが垂れて汚れてしまってもガシガシ洗ってもらえるように、生地やパーツには強度を持たせる設計にしました」。
さらに、今回はパッケージも鈴木さんに依頼。今までのKalita製品と一線を画す、クラフトマンシップが宿ったデザインに仕上がった。中央に描かれた“ミツバチ”は、『B:MING LIFE STORE』の象徴。「大切な蜜を集めるように、毎日を幸せいっぱいに」という意味が込められている。
「コーヒーにまつわる話を紹介するのもいいと思いますが、それ以前に、コーヒーがあなたの生活をどう変えるのかを伝えていく必要があるんです」と、語る新美。例えば、テーブルにお気に入りの食器があるだけで、気分がちょっと楽しくなるあの感覚。そんなエッセンスになれるよう、Kalitaは今も進化し続ける。
ファッションの世界でも「お客様の要求が変化している」と、鈴木さんは話してくれた。「服と一緒に、食器やインテリアを買うのが当たり前になってきている。つまり、服だけで表現できない世界をどう補完するかが重要なんです」。普段何気なく着ている“衣服”や、真心のこもった“食”で、私たちの日常“住”になる。そんなトータルコーディネートが求められる時代だからこそ、今回のようなコラボが必要とされているのかもしれない。
コラボモデルへの想いを語る新美と鈴木さん。2人は対談中、終始笑顔で、コラボの秘話を語ってくれた。
どんな人にWave Styleを使ってほしいか。2人の率直な気持ちを聞いてみた。「やっぱり、コーヒーを淹れる時間や飲みながら話す時間など、“気のおけない仲間と過ごす時間を大切にできる人”に使ってもらいたいですね」と、鈴木さん。
一方、新美は、「キッチンだけじゃなく、リビングで家族と話しながらコーヒーを淹れるくらいが今っぽくていい。ケンカしたあとに、相手のために一杯淹れてあげる…そんなコミュニケーションの手段として、コーヒーを楽しんでもらえたら」と語る。
思いがけない出会いからはじまった、今回のコラボレーション。発売から半年ほど経過した今、このコラボモデルを手にした多くの方に「ちょっといい時間、ちょうどいい時間」をお届けできているのではないだろうか。そして、これからも新たなプロジェクトが控えているという。『B:MING LIFE STORE』とKalitaのタッグに、今後もご期待いただきたい。
今回のコラボモデルを前に並んだ新美と鈴木さん。対談終了後もコーヒー談義に花を咲かせていた。